海外市場への進出は、「日本の商品をそのまま持っていけば売れる」というほど簡単ではありません。言語、決済、配送、法制度など、現地には日本とは異なる環境があります。日本で築いてきた信頼を守りながら、現地の商習慣やニーズに合わせていく「ローカライズ(現地化)」が、成功の鍵となります。
無添加と品質へのこだわりで、日本・台湾の両市場で長年愛されてきたFANCL(ファンケル)。すでに台湾で確かな地盤を築く同社が、このたび台湾向けの自社ECサイトを新たに立ち上げました。パートナーに選ばれたのは、台湾市場で豊富な実績と知見を持つSHOPLINEです。
本記事では、FANCL 海外事業本部 国際営業部 国際営業グループの齋木 虎之介様へのインタビューをもとに、パートナー選定の決め手や立ち上げ時の課題、「台湾ならではの壁」をどう乗り越えたのかをご紹介します。
ブランドの原点を、台湾でも ― 店舗とEC、それぞれの役割
FANCLは台湾で長年にわたり事業を展開し、多くのお客様に商品・サービスを届けてきました。創業以来大切にしてきたのは、「無添加」の考え方と品質へのこだわり。お客様に安心して使っていただける商品づくりを、ブランドの重要な価値としています。
化粧品と健康食品を扱うブランドとして目指すのは、「お客様の美と健康をサポートすること」。そのため、実店舗と自社ECそれぞれに明確な役割を持たせています。
(画像出典:FANCL台湾公式サイト)
「店舗とECの双方を、お客様との重要な接点と考えています。店舗では実際に商品をご覧いただいたり、ご相談いただいたりする機会を、ECでは商品やブランド情報に、より便利にアクセスいただける環境を提供しています。それぞれの特徴を生かしながら、お客様にとって利用しやすいサービスを目指しています」(齋木様)
「売る」だけでなく、お客様と「つながる」場所として自社ECを捉える――。この視点が、後のパートナー選びにもつながっていきます。
「代理店」から「直営」へ ― 台湾を、海外戦略の最重点拠点に
ファンケルにとって、今回の台湾向け自社ECの立ち上げは、単なる「新しい販売チャネルの追加」ではありません。その背景には、台湾での事業モデルそのものの転換があります。
これまで台湾では、現地の販売代理店を通じて事業を展開してきました。長年にわたり多くのお客様に商品を届けてきた実績をもとに、今回、自社直営による販売・EC事業へと舵を切りました。
その狙いは、より直接的にお客様とつながり、ニーズや声に迅速に応えられる体制をつくることです。
「これまで以上に、お客様一人ひとりの声に直接向き合い、迅速にお応えできる体制を整えたい。それが、直営モデルへ切り替えた大きな背景です」(齋木様)
FANCL 海外事業本部国際営業部 国際営業グループ 齋木 虎之介様
自社で直接お客様とつながることで、意思決定をスピードアップし、ニーズやフィードバックを商品開発やサービス改善に生かす。商品を「売る」だけでなく、さまざまな接点を通じてお客様との関係を築いていくことが、今回の取り組みの大きな目的です。
そして、この転換は台湾だけにとどまりません。FANCLは長期経営構想「FV2035」において、2035年までに海外売上高比率を20%以上へ引き上げる目標を掲げ、台湾をはじめとする中華圏を「最重点市場」と位置づけています。
「台湾市場は、単なる一地域ではありません。自社直営モデルやEC強化の成功事例を創出するための、重要な拠点だと位置づけています」(齋木様)
台湾で自社直営・EC強化のモデルを確立し、中華圏でのブランド基盤をさらに強化する。台湾での自社EC立ち上げは、FANCLの海外成長戦略における重要な一歩となっています。
「日本のまま」では届かない ― 台湾EC市場ならではの課題
台湾でのEC展開を検討するにあたり、齋木様がまず直面したのは、日本には存在しない「台湾ならではの仕組み」でした。
ひとつめは、「發票(ファーピャオ)」制度です。
「發票は日本にはないシステムなので、なかなかローカルのところで対応しなければいけないものだと認識していました」
台湾では、事業者が消費者に対して統一発票を発行する義務があります。日本の感覚のままでは対応できず、現地の商習慣・法制度に沿った仕組みが不可欠でした。
ふたつめは、決済と受け取りの方法です。
「台湾では、コンビニ受け取り・支払いが大きなウェイトを占めます。それをどう実現していくか、ECとどうつなげていくかが、ひとつの課題でした」
商品をコンビニで受け取り、その場で支払う――台湾の消費者にとってはごく当たり前のこの購買行動も、日本ブランドにとっては馴染みが薄いもの。自社ECにこの体験を自然に組み込めるかどうかが、立ち上げの分かれ道となりました。
發票、決済、配送、そして法的要件。これらはいずれも「日本のやり方」の延長線上では解決できない、台湾市場に深く根を下ろしたローカライズを推進するために越えないといけたい壁だったのです。
なぜ SHOPLINE だったのか ― 「台湾市場での実績と知見」という決め手
数あるプラットフォームの中から、FANCL が SHOPLINE を選んだ理由は二つ。
「最大の決め手は、スピード感を持って自社ECの立ち上げができること。そして、台湾市場へのローカライズ。この2つが同時に実現できることだったと思っています」
自社ブランドの信頼性を保ちながら、現地の決済方法や配送、法的要件にも迅速に対応する。相反しがちなこの二つを両立させるために、齋木様が重視したのが「パートナーの実績」でした。
「台湾市場で実績と知見を持つ SHOPLINE と連携するのが良いのではないか、と思った次第です」
機能の多さや目新しさではなく、「この市場で、すでに数多くのブランドを成功に導いてきたか」。台湾EC特有の課題を知り尽くしているからこそ提案できる解がある――その信頼が、選定の軸になりました。台湾での豊富な実績に裏打ちされた知見は、初めて台湾で自社ECに挑む日本ブランドにとって、何より心強い後ろ盾となったのです。
ワンチームで走り抜けた立ち上げ ― サポートのスピードと、迷わない管理画面
立ち上げにあたっての課題は、大きく二つ。「決められた期間内でローンチするスピード感」と、「台湾市場へのローカライズ」です。日本で培ってきたFANCLの取り組み方を、台湾の実情に合わせて作り替えていく――簡単ではないこのプロセスを支えたのが、SHOPLINE のサポート体制でした。
FANCL台湾公式サイト
「印象的だったのは、サポートのスピード感です。担当の方や、日本代表の大山を含めた台湾現地のメンバーが、ワンチームでタイトなスケジュールの中を並走してくださいました」
さらに、その伴走はローンチ後も途切れませんでした。
「実際に稼働してオープンしてからも、さまざまな疑問や課題に対して提案をいただける。そのスピード感が大きかったと思っています」
そして、日々の運用を支えたのが、管理画面の使いやすさです。
「管理画面は複雑なデザインではなく、すごくシンプルで直感的に作られていると感じています。だからこそ、EC運用の専任担当者じゃなくても操作のハードルが低くて、扱いやすい。かなり助かっています」
操作に迷ったときも、充実したヘルプページと担当者への相談体制があり、運用上のストレスは大きく軽減されたといいます。「現地化」という難題を、現場が無理なく回せる仕組みへと落とし込めたことも、大きな成果でした。
お客様の「待っていました」に応える ― 再上陸後の手応えと商品戦略
自社ECの立ち上げにあたり、FANCLがまず最優先したのは、台湾で長年愛用されてきた商品を、これまでどおり確実にお客様へ届けられる体制を整えることでした。
「まずは、これまで現地のお客様に親しんでいただいてきた商品を、しっかりとお届けできる体制を整えることを最優先に考えています」
その象徴が、台湾で長く愛されてきたロングセラー商品『マイルドクレンジング オイル』です。慣れ親しんだ定番商品を変わらず届けることから、台湾での新たなスタートを切りました。
そして、6月1日の再上陸以降、早くもお客様から大きな反響が寄せられています。
「SNSやお問い合わせを通じて、『〇〇はいつ発売されるのか』『〇〇の台湾での発売を待っている』といった、本当にありがたいお声を多くいただいています」
自社ECという直接の接点を持ったことで、これまで以上にお客様一人ひとりのリアルな声が届くようになりました。FANCLはこうした声を今後の商品ラインナップや販売戦略にも生かしていく考えです。
「お客様の声を即座に反映する」という直営モデルの狙いは、台湾再上陸とともに、すでに動き始めています。
キャンペーンとSNS広告の連携で、オープン1か月で売上は約4倍に
再上陸を確かな成長へとつなげたのが、開店直後から切れ目なく展開したプロモーション施策です。
6月1日のオープンから8月末にかけて、FANCLは全品を対象とした期間限定の10%OFFセールに、数量限定の「お買い上げ金額に応じた特典(満額プレゼント)」を組み合わせたキャンペーンを継続的に実施しました。あわせて、SNS広告への出稿を戦略的に強化し、セールの魅力を狙ったターゲットへと的確に届けていきました。
「買う理由」をつくるキャンペーンと、「知ってもらう」ためのSNS広告。この二つを噛み合わせた成果は、数字にはっきりと表れます。オープンからおよそ1か月で、オンラインの売上は約4倍へと成長しました。
自社EC×現地に根ざしたプロモーション。台湾市場を知り尽くした SHOPLINE の基盤の上で、FANCLは「立ち上げ」のフェーズから、一気に「成長」のフェーズへと踏み出しています。
「売る場所」から「伝える場所」へ ― これからの自社EC戦略
FANCLが自社ECに込める期待は、単なる販売チャネルにとどまりません。
「ECサイトを単に商品を販売するだけでなく、デジタルを通じたコミュニケーション、動画やSNSとの連携を通じて情報発信を行う。それによって、FANCLのこだわりや無添加の価値をより深く、正しくご理解いただける。そこに可能性と手応えを感じています」
今後、齋木様が見据えるのは二つの方向です。
ひとつは、日頃からFANCLを愛用してくださる大切なお客様に対して、台湾公式ECサイトという最も信頼できるプラットフォームで、安心・安全に、快適に買い物を楽しめる環境を整えること。
もうひとつは、まだブランドに触れたことのないお客様に対して、デジタルコミュニケーションを通じて商品やブランドを理解し、体験していただく「入り口」をつくること。
「今後も市場環境の変化を捉えながら、お客様のニーズに柔軟に対応し、より良い顧客体験を自社ECで創造できるよう努めていきます」
台湾に根を張ってきた実績の上に、デジタルで新しい接点を重ねていく。FANCLの挑戦は、まだ始まったばかりです。
まとめ
長年台湾で愛されてきたFANCLは、現地の代理店モデルから自社直営へと舵を切り、ブランドの信頼を守りながら台湾向け自社ECを立ち上げました。
台湾ならではの發票制度やコンビニ受け取り・支払いなどの課題には、台湾市場で豊富な実績と知見を持つSHOPLINEと連携。ワンチームでスピーディーに対応し、現地の決済・配送・法的要件に合わせながら、「スピード」と「ローカライズ」を両立しました。
さらに、開店から8月末まで継続したキャンペーンとSNS広告を連動させることで、オープンからわずか1か月でオンライン売上を約4倍に伸ばすなど、着実な成果にもつながっています。
「日本で成功したものを、そのまま海外へ」ではなく、現地の商習慣や制度に合わせて事業を根付かせること。海外でのEC展開を成功させるには、こうしたローカライズが欠かせません。そして、その実現を支えるのが、現地市場を深く理解し、豊富な支援実績を持つパートナーです。
海外市場でのEC立ち上げを検討している企業様、台湾進出における決済・法制度への対応にお悩みの方、日系ブランドの海外ローカライズ事例を知りたい方にとって、FANCLの取り組みがひとつのヒントになれば幸いです。
※本記事は、FANCL台湾EC担当者様へのインタビュー動画および追加取材への回答をもとに構成しています。
本記事でご紹介した内容については、インタビュー動画でも詳しくご覧いただけます。実際の取り組みの背景や考え方を、ぜひ動画でもご確認ください。